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戦国ラブドール
第11章 苛立ちの半兵衛
「え、ちょっと、なんだい!?」
なんの用事かも言わずに連れて行かれる訳にはいかず、大海も抵抗する。だが、佐吉は大海より小柄でも男。ずるずると引きずられてしまう。
「お、お姉ちゃんに乱暴しないで!」
小夜も慌てて止めようとするが、佐吉が敵意の溢れる険しい目を向ければ怯えてしまう。結局止められず、大海は外へと連れていかれてしまった。
「あ……ど、どうしよう」
小夜は追いかけようとするが、足が震えて動かない。頼れる半兵衛は病の身。途方に暮れていると、開きっぱなしになっていた入り口に、また影が落ちた。
佐吉が戻ってきたのかと怯えるが、小夜は顔を上げて言葉を失う。夜だというのに、肩衣に袴というかしこまったいでたち。赤い鬼の面を付けていて、顔は分からない。
「半兵衛……さん?」
結わずに下ろした豊かな黒髪が、小夜の目を奪う。小夜の前に立った鬼の面は、細い手を差し出した。
「体は……大丈夫なんですか!? 倒れたって聞きましたけど」
だが、男は声を出さない。小夜を抱き上げると、廊下へ向かい歩き出した。