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戦国ラブドール
第11章 苛立ちの半兵衛
一方、佐吉に引っ張られて、大海は屋敷の裏まで来ていた。怒りを隠せない佐吉は大海を壁に押し付け、ようやく口を開いた。
「なぜ、こんな馬鹿な真似をした」
佐吉は大海の髪を掴み、這うような声を上げる。髪については会う人間全てに言われていたが、ここまで怒る者はなかった。
「それは……けじめだよ。ここで暮らしていくため、切り替えるために」
「なぜ簡単に諦めるんだ! まだ、長浜から出られないと決まったわけではないだろう! 紅天狗の件が解決すれば、まだ分からない。なのにどうして、勝手に見切りをつけるんだ!」
佐吉の怒号に、大海は恐ろしさより先に驚きを覚える。讒言をしたのは佐吉と聞いても、大海はそれが善意が悪意なのかははっきりと分からなかった。だが、ここまで面と向かえば嫌でも分かる。佐吉は、たいした縁もない大海のために、力を尽くしていたのだ。
「諦めるという事は、お前がいつ馬鹿共に弄ばれても文句は言わないという事なんだぞ! それでいい訳ないだろう!」
まくし立てた後で、佐吉は大海が気の抜けた顔をしている事に気付く。