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戦国ラブドール
第11章 苛立ちの半兵衛
佐吉は、これ以上大海を説得する言葉が見つからなかった。弱者が諦め、強者が横暴に力を振るう。それは間違いであるのに、弱者本人が納得し受け入れていれば、覆す事は出来なかった。
「こんな、理不尽……まかり通ってなるものか!」
佐吉が拳を固く握り締めたその時、背後から足音が響く。
「――その覚悟、ぜひ私にも確かめさせていただきたいですね」
「っ、半兵衛様!?」
現れたのは、夜着に身を包み、いかにも病床から抜け出してきた姿をした半兵衛だった。二人が驚いているうちに間へ割って入ると、半兵衛は大海の短い髪を撫でた。
「若いですね。腹の代わりに髪を切り、生まれ変わったつもりですか。しかし新しい人生とは、そう易々と歩めるものではありませんよ。真っ直ぐ進んでいるつもりでも、どこで、何に足を取られるかも分からない」
「半兵衛、殿……体は、大丈夫なんですか? どうして、こんなところにいるんです」
大海が訊ねても、半兵衛は答えない。表情こそ穏やかではあるが、その奥には何か言い知れぬ恐ろしいものがあった。
「あなたは腹を切ったのと同じ苦しみを、耐えられますか」