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戦国ラブドール
第12章 月の掛け橋
大海も、昨日の件がなければ素直に同意していただろう。だが、半兵衛の影には、女をかしずかせる圧力がある。言葉を濁し答えを避ければ、小夜はさらに半兵衛を褒め称えた。
「見た目も中身も綺麗で、わたしあんな人に出会ったの初めてだもん。いっそ半兵衛さんが、長浜の主だったらよかったのに」
「けど小夜、あの人は……ほら、奥さんも子どももいるだろ、多分」
「そんなの分かってるよ。けっこう年上だもん、それは当たり前でしょ? でも武士だもん、側室だって必要だもん」
「何も、わざわざ側室になりたいなんて言わなくても……」
小夜の熱の入れようは、大海が咎めても全く揺らがない。それどころか、小夜はさらに大海を困らせる問いを投げ掛けてきた。
「ねぇ、お姉ちゃんは好きな人、いないの?」
「す、好きな人!?」
「怖い人とか乱暴な人も多いけど、大谷さんみたいに素敵な人もいるじゃない。誰かに、懸想したりしないの?」
汚れのない目で詰め寄られると、大海はたじろく。恋など、大海にとって生まれてこの方縁のないもの。年頃の女なら誰しもが抱くような感情でさえ、大海は一歩出遅れていたのだ。