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戦国ラブドール
第12章 月の掛け橋
「小夜、じゃあ半兵衛殿に教えてもらいな。あたしは……ちょっと用事を思い出したから、先に戻るよ」
「え、お姉ちゃんもう帰るの?」
「小夜は一人でも大丈夫だろ。半兵衛殿、小夜をよろしくお願いします」
大海は思いつきのまま動くあまり、すっかり半兵衛に抱いた疑心を忘れて小夜を預ける。そしてそれに頷いた半兵衛はまさに穏やかで、大海に夜を思い出させるような隙を一分も見せなかった。
「ええ、お気をつけて」
大海は先に部屋を出ると、真っ直ぐに吉継の屋敷に向かう。だが声を掛けて出てきたのは、吉継ではなく佐吉だった。
「お前、何の用だ? 吉継は今、体を壊して寝ている。邪魔をするなら帰れ」
相変わらず佐吉は無愛想で、言葉も厳しい。だが大海は、態度が変わらない事にかえって安堵していた。
「寝ているって……そんなに悪いのかい?」
「良ければ寝ている必要はない。そんな事も察せない間抜け面を見せれば、余計に迷惑だ。すぐ帰れ――」
佐吉が追い返そうとしたその時、奥から夜着のままの吉継が歩いてくる。そして背後から佐吉に拳骨を食らわせると、大海に微笑みかけた。