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戦国ラブドール
第12章 月の掛け橋
「ああ、だからやけに疲れた顔してるんだね」
「馬鹿な子だと思われたら、半兵衛さんに嫌われちゃうかも……」
「あの人は、そんな事で態度を変えるような人じゃないだろ。怒る姿なんて想像出来ない――」
口走ってから、大海は夜の半兵衛を思い出す。小夜の覚えが悪いくらいで怒りはしないだろうが、苛立ちの全くない存在ではないのだ。
(半兵衛殿は結局、あの時なんで外をうろついていたんだろう)
考えても、答えは出ない。しかし大海は瞼の裏に、半兵衛の闇がいつまでもこびりついているような気がした。
「小夜、あたしも半兵衛殿に囲碁を教えてもらいたいんだけど、次は一緒に行ってもいいかい?」
「お姉ちゃん……ありがとう! わたし一人じゃ耐えられないもん、お姉ちゃんと一緒がいい!」
小夜に気を遣って言い出した訳ではないが、小夜は心底安堵した表情で大海に抱きつく。そこまで苦痛な事でも嫌だと言い出さない小夜に、大海は乙女心の複雑さを感じ溜め息を漏らした。
今はまだ、細く頼りない月。だがそれは、満月に向けて光を伸ばし始めていた。