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戦国ラブドール
第12章 月の掛け橋
赤い布――赤い頭巾を象徴とする『紅天狗』が狙うのは、秀吉が得た美しき月橋の姉妹。二人が仮に美女でなくとも、羽柴の名にかけて、仕える者を易々とさらわれる訳にはいかない。堂々と宣戦布告をされた以上、見逃す事は許されなかった。
「ああ、孫六のついでに、子飼い達も好きに使うといい。働き次第では、此度の戦に連れて行くと約束しよう」
すると孫六がころりと態度を変え、目を輝かせる。
「中国征伐へ、私達も向かって良いのですか?」
「ああ、お前達もそろそろ戦の空気を覚えておかなければならない歳だ。戦ももちろんだが、今回は規模が大きい。力一辺倒ではなく、調略も学ぶと良い」
「はい、秀吉様!」
明らかに士気の上がった孫六に、秀吉は笑みを零す。武士とは、老いも若きも問わずに戦を好むもの。順調に育つ若芽の芽吹きは、着実に近付いているようである。
「だが、まずは足元の整備からだぞ。己の支配する民も守れぬような領主が、他を攻めるなど愚の骨頂だ。高虎の話をよく聞いて、従うように」
高虎の名を出すと、孫六は再び無愛想な顔に戻る。不機嫌の原因を悟った秀吉は、小さな溜め息を漏らした。