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戦国ラブドール
第13章 欲というもの
 
 暗い空気にげんなりするどころか、大海は深く話を受け止めていた。虎之助は胸の奥から湧き出る衝動のまま大海の頭を撫で、短い髪に指を絡ませる。

「虎之助?」

 突然の熱に、大海は戸惑い頬を赤くする。大柄であるからこそ、虎之助にぴたりと収まる大海。そのまま抱き締めてしまいたくなるが、往来でそこまでは出来なかった。

「……ちょっと、いいか?」

 虎之助は大海の手を掴むと、郊外の方へ歩き出す。しばらく進み道を外れれば、人目もない小さな森が見えてきた。

「虎之助、突然どうしたんだ――」

 困惑する大海を、今度こそ虎之助は胸の中に収める。柔らかな感触に、女の持つ独特の香り。充分にそれらを感じ心を満たすと、虎之助は口を開いた。

「お前がこんな女だって初めから知っていたら、あの夜誰にも触らせなかったのにな」

「と、虎之助? ちょっと、その……離れて……」

「嫌だ。こっちは散々我慢してるんだ、今日ぐらい俺のものになれ」

 引き腰になる大海を逃がすまいと、虎之助の腕が強く大海を捕らえる。ぴたりと体を合わせれば、早くなっていく心臓さえ共有するようであった。
 
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