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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
「さすがは大海さん、義理堅いですなぁ。ねぇ、虎之助さん」
皮肉めいた行長の言葉に、虎之助は苦い顔をしてしまう。大海が行長の誘いを断ったのは嬉しい事だが、観光が明日でなくとも出来るのも確か。大海が本当に気になるのであれば、明日は自分が譲っても構わない約束である。
だが、その相手が行長で、気になるのが宣教師となると、虎之助も器量の大きさを見せるのにためらってしまう。自分が譲って喜ぶのが大嫌いな行長と宣教師となれば、口は動かなかった。
「……あーあ、まったくそれに比べてどこぞのお虎さんは、体ばかりが大きいようで」
「ああ? 喧嘩売ってんのか、お前」
「売りたくもなりますよ。こんな男に義理立てる大海さんが可哀想で仕方ありません」
「ちょっと、やめなよ二人とも! あたしは自分でそうするって決めたんだ、行長には申し訳ないと思うけど、別に人にとやかく言われる義理はないよ」
大海のため、という大義名分で交わされる喧嘩は、大海が否定しては続けられない。行長も虎之助も、引くしかなかった。
「ほら、せっかく用意してくれた料理が冷めちまうよ。食って満腹になれば、心も落ち着くさ」