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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
「しくじったな」
「高虎さん……いや、高虎さんは悪くないですよ。孫は……その、とにかく全てに反抗してみたくなる時期なんです! 俺がなだめてきますから」
「いや、あのガキは放っておけ。あれとは相性が悪い、近くにいると調子が狂う。俺が反省してるのは、行長に対してだ」
市松と虎之助の不安げな瞳を見て、高虎は決まりの悪そうな顔をする。
「今回は頭に血の上った俺が悪かった。確かに今のまま捜査しても、後手に回るだけだ。市松、虎之助、お前達は引き続き姉妹の監視を頼む。俺は行長に謝って、今後の策を練る」
「けど、高虎さんがあんな奴に頭を下げるなんて」
「性根の悪さと、仕事の評価は別物だ。物を深く考えず憎い人間の逆ばかりを進んでは、いつか落とし穴に嵌まるぞ」
高虎はそう言い残すと、行長を追って出て行く。二人は高虎の背中の大きさに感心し、尊敬の眼差しを向けた。
「なあ、市松。高虎さんは、やっぱり出来た武士だな。俺とは大違いだ」
「ああ……俺達も、とにかく見張りを頑張ろうぜ」
荒れた評定もひとまずは収まり、武士達はまたそれぞれ動き出す。紅天狗は、まだ沈黙を続けたままだった。