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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
しかし、雪のように淡く溶けてなくなってしまいそうな半兵衛を前にして、大海は放っておけなかった。
「分かりました、とにかく、外は寒いです。中に入りましょう」
「……ありがとうございます」
半兵衛は大海の耳に軽く口づけると、手を引き城の方へ向かう。侍女の屋敷で話を聞くつもりでいた大海は一瞬躊躇するが、ひとまず半兵衛に大人しく従う事にした。
そして、二人が去った後。物陰から、二つの影が飛び出す。紅天狗の一件で屋敷を見張っていた、市松と虎之助だった。
「虎之助、今のは……どうして半兵衛様が、あいつを連れて行くんだ? しかも、あんな仲睦まじく……」
「俺に聞かれても知らねぇよ。けど、なんでわざわざ夜中に……」
「まさか、半兵衛様が紅天狗の内通者なんて事はねぇよな? だって、今日あの人が現れるまで、この屋敷には誰も来なかったんだぜ?」
「半兵衛様に限って、そんな事ある訳ねぇよ!」
虎之助は勢いで否定するが、しばし考え込むと、半兵衛の向かった方を指差す。
「ある訳ねぇが……見張りを怠る訳にもいかないな。市松、お前後を追え」