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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
「なんで俺!? いや……お前、気になるんじゃないのか? ほら、なあ」
「俺に行けってのか!? あんな空気だぞ、あの人が何を企んでるのかは明らかじゃねぇか! 無理だ、俺が行ったら現場に乗り込んで、力の限り暴れちまう」
「いっそ、暴れちまえばいいだろ。そんなに腹立つならよぉ……」
「他人事だと思って好き勝手言いやがって。俺は、口を出せる立場なんかじゃねぇんだよ!」
虎之助は市松の背中を蹴り飛ばし、追いかけろと城を指差す。
「この、覚えてろよへたれ虎っ!!」
仕方なく向かう市松を見送りもせずに、虎之助は再び監視のため物陰に戻る。だが苦々しい気持ちは、役目を逃げても変わらなかった。
(このままで……いい訳ねぇよな。俺がはっきりしない限り、いつまでもこんな事は続くんだ。けど……)
虎之助の心に深く残るのは、堺で行長に言われた一言。一生を背負う重みへの覚悟、自分で納得出来る答えを、まだ虎之助は出せていなかった。
「――くそっ、何もかも、あいつのせいだ!!」
虎之助は全てを行長に責任転嫁し、目を背ける。背けるあまりに、虎之助は友である市松の様子にも気が付いていなかった。