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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
 
 市松は途中まで素直に城へ向かっていたものの、ふと足を止めると引き返す。半兵衛の側には、半兵衛付きの小姓がついている。仮に人払いをしていたとしても、騒ぎになれば駆けつけられる場所には待機しているはずだ。また、彼らは大海と共に帰ってきたのを目撃しているはず。半兵衛自身が大海を拐かすような事をしても、すぐ露呈するのは明らかだ。

 市松でもすぐに予測出来るのだから、「今孔明」と呼ばれる半兵衛が愚を犯すはずがない。市松が見張らずとも、大海は安全な場所にいると思って間違いないのだ。そう気付いたら、虎之助の使い走りにされるのが途端に馬鹿らしくなってしまった。

(あのへたれ虎め、お前が今声を上げないでどうするんだよ。相手が誰だろうが、止めに入らなきゃならねぇ時だってのに。何が自分にゃ資格がないだ。堂々と好きだと言えて、動ける立場のくせに)

 大海が半兵衛と恋仲であるなら話は別だが、そうと決まった訳ではないのだ。ならば表に出て文句を言うなり、奪い返す権利は誰にでもある。何を難しく考えて躊躇しているのかは分からないが、市松には虎之助が日和見をしているようにしか見えなかった。
 
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