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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
いくら考えても晴れない靄は、心を蝕む。気が付けば市松は酒を調達し、自身の部屋まで戻っていた。
(何にも、覚えてないんだよな)
大海を襲った日から、控えていた酒。久々の味は、止めたその日に記憶を戻す。立派過ぎる故に、受け入れられる者の少ない市松自身。それを根まで包んで愛せる器の感触は、他には味わえない貴重な体験なのだ。覚えていないのは、あまりに惜しかった。
(いっそ飽きるまで抱き倒しちまえば、忘れちまえるのかもな)
元々、大海は玩具として下げ渡された女である。そして今でも、その大義が崩れた訳ではない。本人とてそれを覚悟で長浜に留まっているのだから、性欲をぶつけても何の問題もないのだ。
酒に理性が流され、浮かぶ身勝手な発想。だが思考の鈍った市松は、それが画期的なものだと考えていた。
見張りで睡眠をあまり取れていない市松は、すぐに眠気に襲われ横になる。まぶたを閉じれば、浮かぶのは大海の姿だった。
だが、それは乱れた姿ではない。理性を保っている内は全く思い出せない、だが確かに市松が目にした、髪を切った瞬間の大海だった。