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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
 






 普段は穏やかで虫をも殺さぬような顔をしているのに、半兵衛の瞳は氷より冷たくなる時がある。修羅を秘めた瞳に見つめられると、大海は縛られてもいないのに身動きが取れなくなった。

「この背中……どうしたんですか?」

 半兵衛に従うまま寝巻きを脱いですぐに、大海はその目に射抜かれる。だが、質問に対する答えを大海は持っていなかった。

「背中……?」

「ここ、『曹』と落書きされてますよ」

 半兵衛の人差し指が、大海の背中の真ん中辺りをつつく。だが指摘されてもなお、大海に心当たりはなかった。

「落書き……?」

「今日、誰と寝たんです? 小夜さんは、こんな下らない悪戯をするはずがありません。あなたが今日、肌を晒した男が犯人でしょう」

「そんな人、いません。今日は誰も……」

 言いかけて、大海は悪夢を思い出す。もし、あれが現実なら。血の気が引く大海に、半兵衛は眉をひそめた。

「堺から戻ってすぐに、はしたない娘ですね。躾けてあげましょう」

「ち、違います! あたし、誰にも抱かれてなんかいません!」

 だが半兵衛は大海の背中へ、寝巻きと共に捨てられた帯を鞭のように打ちつける。
 
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