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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
「入りなさい」
半兵衛の返答に、大海は体中の血の気が引いた。秘め事を見られるなど、半兵衛にとっても恥のはずである。だが大海が抗議する間もなく、武士は襖を開いた。
「半兵衛様――」
武士はすぐ柱に縛られた大海に気づき、言葉を失う。早く立ち去ってくれと願いながら、大海は頭を下げて柱を抱き締めた。
「見れば分かると思いますが、この娘、誰かの悪戯で背中に落書きをされたんです」
だが半兵衛は、大海の願いを打ち砕くように武士を引き止める。背中に視線が集まるような気がして、大海は出来る限り縮こまった。
「この落書き、その手拭いで落としてください。このままでは、可哀想ですから」
振り返れない大海は、武士がどんな表情をしているかは分からない。だが、彼は半兵衛の部下。半兵衛の頼みを断れない事だけは、確かだった。
「んっ……」
背中に当たる、湿った感覚。濡れた手拭いが、背中の真ん中をごしごしと擦る。真面目に仕事をこなす武士へ、半兵衛は溜め息を漏らした。
「あまり強く擦っては、肌が傷ついてしまいますよ? 貸してごらんなさい」