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戦国ラブドール
第15章 恐怖、再び
半兵衛は大海の肩を抱き寄せ、赤子をあやすようにさする。そこから軽く甘い痺れが走るが、落ち込んだ声の半兵衛を前に、欲に耽る暇はなかった。
「私はお留守番です。まだまだ私がいないと駄目なくせに、大丈夫だと言われて置いて行かれました」
「それは半兵衛殿、が……心配だからじゃ」
「秀吉の方が心配ですよ。あの人は人の心を掴むのは上手いですが、計略は甘いところがあります。今回向かう中国は、策謀で這い上がってきた一族の多い地域です。いくら黒田殿が優秀でも、いえ、だからこそ狙われる危険もあるのに、表に立たせすぎては……」
戦の采配は、いくら囲碁を嗜んでも大海に理解しきれるものではない。だが半兵衛が憂い嘆いている気持ちは、痛いくらいに分かる。それは、半兵衛に避けられ心を痛める吉継と、全く同じだったのだ。
(半兵衛殿の様子がおかしかったのは、置いて行かれたせいなのかな)
秀吉が心配して遠ざけている事など、半兵衛は充分に承知しているはずだ。だとすれば、安易な慰めは苛立ちにしかならない。大海はひとまず半兵衛に身を預け、ただ半兵衛の嘆きに耳を傾けた。