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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
変わったのは、大海の気持ち一つである。現実を受け入れ、その中で己の道を探す。佐吉はそれを否定したが、大海を見ていると考えずにはいられなかった。
「……本当に、楽しいと思っているのか?」
「もちろん。じゃなきゃ、今ここにはいないよ」
正しさを貫き険しい顔をし続ける事と、折れて笑顔を取り戻す事。佐吉から見ても、今の大海が不幸には見えなかった。
「お前は――」
佐吉が再び口を開いた、その時だった。
「吉継。佐吉さんは、いらっしゃいますか?」
外の方から響いてくる、それなりに年の取った女の声。足音は吉継が迎えに行く前に近付き、こちらへ向かっていた。
「ああ、やはりこちらでしたか」
部屋へ入ってきたのは、志麻よりも少し年が上の侍女。その顔を見ると、吉継は僅かに目を見開いた。
「母上、どうなされました?」
「あなたに用はありません。佐吉さんを探していたんです」
吉継は、彼女を母上と呼んだ。大海が目を丸くしていると、彼女は大海にお辞儀する。
「いつも息子がお世話になっています、吉継の母です」