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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
「吉継の母君ですか……あ、あの、あたしこそお世話になっています」
大海も慌てて頭を下げ、挨拶を交わす。すると吉継が、間に入り説明を始めた。
「大海、これは僕の母上。この城で、おねね様付きの侍女をしてるんだ。母上、これは僕の囲碁友達の月橋大海。色々噂は聞いてるよね? 面白い子だよ」
「ええ、志麻が手を焼いていると、よく皆の噂に上がる名前ですね」
大海と同じ侍女であれば、自然と名前も耳にするはず。当然、大海がこれまで起こした事件も全て知っているはずだ。大海も、自分が問題児である自覚はある。そんな自分が大事な息子と友達と知れば、彼女は母として何を思うか。大海は頭を下げたまま肩を縮め、叱責を待った。
「話を聞くたびすかっとしていましたから、お会いできて嬉しいです。さ、顔を上げてくださいな」
「え……?」
だが彼女は怒るどころか、随分と明るく声を掛ける。大海が面食らっていると、それを察した彼女はころころと笑った。
「人の前で平然と息子を扱き下ろされて、嫌な気持ちにならない母親がこの世にいると思いますか? その志麻に苦い顔をさせているんですから、愉快でたまりません」