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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
志麻は、市松を初めとした尾張派の子飼いを優遇する傾向の強い女である。確かにそれは、近江派の息子を持つ彼女にとっては、面白くない話だ。だが、それにしてもその話振り。吉継と同じ、一筋縄ではいかない血を感じずにはいられなかった。
「それで母上、佐吉に用事って?」
「志麻から、佐吉さんへ文を渡すよう頼まれたんです。別に急ぎでないんですから後でも構わないでしょうに、今すぐ行けとうるさくて」
「俺に文を?」
「ええ、うた殿から届いたものです」
差出人の名前を聞いた瞬間、佐吉に焦燥が走る。慌てて文を受け取ると、懐へ突っ込んだ。
「佐吉さん、祝言はいつになるのかしら? せっかくいいご縁なのに、戦のせいで延ばし延ばしになっては可哀想ですよね。待ち切れない時は、私からおねね様に話しておきますよ」
「あ、それは……いや、その」
うろたえる佐吉に、大海はまたまた目を丸くする。
「祝言……? 佐吉、結婚するのかい?」
「先方が、佐吉さんの能力を高く買ってくださいましてね。秀吉様が、縁談を取り持ってくださったんです」