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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
 
「いや、しかしまだ、何も決まってはいない! 戦は日々激しくなる、このような時に浮ついた話は良くないと、流れるかも分からん」

「まさか、そんな事ありませんよ。うた殿だって、こうしてまめに手紙をくれるじゃないですか。佐吉さんのような方は、これからの羽柴には必ず必要になります。戦に明け暮れても、秀吉様は佐吉さんを忘れたりしませんよ」

 吉継の母は、佐吉の結婚を自分の息子の事のように喜んで大海へ自慢する。だが佐吉の胸の中は大風が吹き荒れ、崖から落ちたような気分に襲われていた。

 そこへ止めを刺したのは、大海の一言。大海は佐吉に屈託のない笑みを向け、心から祝福したのだ。

「そんな話、知らなかったな……おめでとう、佐吉!」

 祝われているのに、佐吉は目の前が真っ暗になり目眩に襲われる。沸いてくるのは、身勝手な怒りと、悲しみ。八つ当たりだと自覚はしていても、声を張り上げずにはいられなかった。

「――うるさい、黙れ!!」

 佐吉は大海の胸ぐらを掴むと、今にも殴りかかりそうな剣幕で怒鳴りつける。

「何も知らないくせに、呑気に言いやがって……その面、二度と俺の前に見せるな!」
 
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