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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
 
 佐吉は大海を突き飛ばすと、そのまま家から飛び出す。突然の罵倒に、大海は尻餅をついたまま固まってしまった。

「大海さん、大丈夫ですか!? ああ、佐吉さんってば、一体突然どうしちゃったのかしら……」

 吉継の母に抱き起こされても、大海はしばらく言葉一つ出せなかった。あまりに唐突な怒りに、頭が追い付かなかったのだ。

「母上、ちょっと僕佐吉を追いかけてくる。大海を頼める?」

 吉継は母親が頷くのを確認すると、大海の肩を叩く。吉継を見つめる瞳は今にも涙が零れそうで、不安のためか顔も青くなっていた。

「大海、佐吉は結婚の重みで、ちょっと気が立ってるんだよ。君は何も悪くない。あんまり気にしちゃ駄目だよ」

 それだけ言い残し、吉継は外へ出て行く。吉継の母も大海の肩を叩いて慰め、声をかけた。

「そうよ、吉継の言う通り。結婚は色々大変ですから、時には苛立つ事もあるんでしょう。男の心は男が一番分かるはず、佐吉さんは、あの子に任せましょう」

 男の事を男に任せるならば、女を分かるのは女だけ。吉継の母は自分の子どもをいたわるように、大海の背中を撫でた。
 
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