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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
 
「ちょっとごめん、言い方悪いけど、婚約者からの手紙なんて、別に急ぎで渡すほどのものじゃないでしょ。けれど志麻は、わざわざ敵対している僕達に、同じく敵対している母上を指名して、今でないと駄目だと言って手紙をよこした。おかしいと思わない?」

 手紙を急がせた相手がもし市松や虎之助であれば、親心とも解釈出来るだろう。だが志麻に、佐吉の祝言を喜ぶ理由はない。とすれば、そこには必ず悪意が隠されているはずである。

「多分、これは牽制だ。市松や虎之助の玩具を、僕らが取るなって事だろうね。大海が僕達と共にいる時間をわざわざ狙って、母上に手紙を押しつけたんだと思う」

「それじゃ、お前の母上も志麻の手先なのか?」

「いや、それは違う。けれど、志麻の思うように踊らされたのは間違いないね」

「俺には、よく分からん。何がどうして、志麻の悪巧みなんだ?」

「考えてみなよ、この時間に手紙を渡すよう頼めば、必ず大海の耳にも佐吉の婚約の話が伝わる。母上は佐吉を可愛がっているから、顔を合わせれば世間話として話題に上げるはずだし。それを聞けば、大海が何を思うか。想像は難しくない」
 
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