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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
諍いがあった以上、大海はしばらく自分も避けるだろう。そう踏んだ吉継は、行長と話をした後、先手を打つため侍女の屋敷に赴いた。
もう、空は暗くなっている。寒くなれば日が落ちるのは早くなるため、時間としてはそう遅い訳ではない。今ならば大海も部屋に戻っているはず。向こうが来ないなら、自分が行くしかない。吉継が声を掛ければ、顔を出したのは小夜だった。
「大谷さん。どうしたんですか? あ、入ってください」
幸い小夜は、吉継に警戒心を抱いていない。初めて出会った頃、小夜を邪険にしないで正解だった、などと思いながら、吉継は座った。
「大海は、まだ戻ってないのかな? お小夜ちゃん、一人?」
「お姉ちゃんに用事ですか? 夕方、志麻さんに何か言いつけられてから、まだ戻ってないですよ」
「志麻が?」
「あ、でも多分、仕事自体はもう終わってると思います。何か運んでほしいとか、そんな感じの雑用みたいでしたし」
志麻は元々侍女を纏める立場である。大海へ雑用を頼む事も、決して不自然ではない。小夜だけの話で、それが策略か偶然かは判断出来なかった。