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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
「出ていって!!」
「……ごめん」
吉継はひりひりと痛む頬を押さえ、部屋から出ていく。小夜が抱く女としての矜持を、吉継が打ち砕いてしまったのは確かだ。だが、吉継もここで言わずにはいられなかったのだ。申し訳ないと思う気持ちはあっても、小夜をなだめるために抱く事は出来なかった。
寒空を見上げ、思うのは大海の事。半兵衛の元へ向かったのだとすれば、吉継は割って入る事も敵わない。
(……まるで、蝶々みたいだ)
蝶々はふわりと空を舞い、気まぐれに花へ止まり、美しい羽を休ませる。だがすぐに飛び立ち、決して一つの花には留まらない。だが、それを憎いと思ってはならない。蝶々が飛び回らなければ、花は命を繋げず種なしのまま枯れてしまう。それぞれの花が未来を作るためには、蝶々を閉じこめてはならないのだ。
それでも蝶々が欲しいと望むなら、ただ蝶々に選ばれるのを待つだけの花でいてはならない。羽を広げ、共に舞い、命を繋ぐ蝶に変わらなければならないだろう。
(お小夜ちゃんの変化に、志麻の策略……何かが、僕の知らないところで色々動いている。病なんかに負けてる場合じゃないな)
二匹目の蝶々は、夜へと飛び立つ。だが吉継の知らぬ間に、すでに蜘蛛の巣は張られていた。