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戦国ラブドール
第16章 眠れぬ夜は
前に平謝りしたのはなんだったのかと、大海は腹を立てる。だが、酒に酔った市松はひたすら笑うだけで、話の通じている様子は見当たらない。逃げるにも逃げられず、大海はただ溜め息をつくしかなかった。
「……眠れないのは、確かだよ。ここ最近、嫌な夢を見るんだ。次第にそれが夢なのか現実なのかも分からなくなって、頭がおかしくなりそうになる。だから、あんまり寝ないようにしてるんだ」
大海は、話でもすれば市松の気も紛れるかもしれないと考える。だがいざ市松に答えてみても、尻を撫でる手は止まらない。
「半兵衛殿のところに行ってるのは、囲碁を教えてもらうためだけど……不思議と、半兵衛殿と一緒だと、変な夢を見ないんだよ。いや……少し違うかな。自分の部屋以外なら、変な夢は一度も見てないかも……」
自分で言い出して、大海は気づく。そういえば悪夢は、自分の部屋で眠った時しか見ていない。以前市松に捕まった時も、堺に滞在した時も、他の部屋で過ごした日に悪夢を見た記憶はなかった。
「なんでだろ、枕でも悪いのかな」
大海が独り言を呟けば、市松は無駄に大きな声で返事する。