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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
「部屋は、寝ていたあそこをそのまま使っていいんですか?」
「ええ、姉妹同室の方が互いに落ち着くでしょう。二人で使いなさい」
具体的な仕事は明日から仕込むつもりなのだろう、それで志麻の話は終わる。部屋を出た大海は、戻るついでに再び城を小夜と共に歩く事にした。
「あっちの奥は、偉い人しか入れないから立ち入り禁止だって。それから、こっちは――」
小夜は明るく努め、大海と手を繋ぎ歩いていく。そしてふと、ある部屋の前で足を止めた。
「そういえばここ、書庫だって言ってたよ。ちょっと見てみる? お姉ちゃん、本好きでしょ?」
確かに大海は、村にいた頃は父に本を借りてよく読んでいた。だが勝手に入っていいのかとためらっていると、小夜は手を引っ張り襖を開いた。
「すごい、こんなに本がたくさん……」
壁一面の棚に置かれた書物の山に、大海は目を輝かせる。適当に一冊抜いて手に取れば、それは庶民の大海にはなかなかお目にかかれないものであった。小夜は大海と違って書物にさして興味はない。だが大海が喜び傷を忘れている姿を見ていると、笑顔がこぼれた。