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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
 
 だがその時、襖が開き一人の武士が入ってくる。大海よりも小さく、面持ちは花のようで、髭もなく若い風貌だったため、大海は一瞬女性かと見誤る。だが着ているもの、そして腰に下げた刀を見れば、明らかに武士であった。

「邪魔だ」

 だが彼の表情は、棘のある花だった。美しい姉妹を目にしても鼻の下を伸ばす事なく、つかつかと中へ入る。だが大海が本を手にしているのに気付くと、眉間に皺を寄せた。

「遊女に学問など必要あるまい。汚されたら困る、返せ」

 はっきりと二人を見下した言動に、大海は眉をしかめる。昨日の宴を思えば、遊女と言われても仕方ない。だがこの城の武士は、それに参加し乱痴気騒ぎに加担しているのだ。自分達だけ侮蔑されるのは、どうしても許せなかった。

「その遊女を各地から攫って、一晩中喜んで抱いてるのはどこの殿様と武士なんだい? 汚されたくないなら、今すぐ城から追い出せばいいだろう」

 武士はおそらく、元服も迎えていない若者だ。そんな武士が、主である秀吉に意見など出来るはずがない。追い出してもらえるならば大海も有り難いが、それは無茶な要求でしかなかった。
 
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