この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
夜から朝にかけて二喬の姉妹を見張るのは、市松と虎之助。昼間は佐吉と高虎。そう取り決め紅天狗に備えていたはずだが、まだ交代の時間ではないのに市松の姿が見当たらない。虎之助は首を傾げ、侍女の屋敷の回りで市松を探していた。
「おい、市松?」
昨日の夜、『俺に任せろ』と虎之助を押しのけ、一人で見張りを買って出たのは市松である。虎之助をわざわざ休ませてまで怠けるとは、どうにも不自然だった。
「あいつ、どこ行ったんだ……?」
もう日は明るくなっている、いつもより少々早く見張りを交代したのだとしても、その割には佐吉や高虎の姿もない。市松の名を呼びながら屋敷の影に回れば、思わぬ人物とぶつかった。
「っ!」
「おっと……なんだ、虎之助さんですか。朝から愛想のない顔ですなぁ」
出くわしたのは、虎之助最大の敵である行長。虎之助は顔を歪め不快感を示すが、同じ子飼いとして無視は出来なかった。
「おい、お前。市松を知らないか?」
「それはこっちの台詞です。虎之助さんは一緒じゃなかったんですか?」
行長はどこか焦ったような表情で、虎之助に聞き返す。