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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
それは、昨晩の事。灯台の頼りない明かりが、虎之助の手元を照らす。白く濁った杯は、まるで今の虎之助のようだった。だが目の前に座る高虎は、未来を手の平で転がすように飲み干す。そして、迷う若虎へ訊ねた。
「それで、俺に相談って?」
「はい……高虎さんに話すのは、筋が通らないかもしれませんが……その、大海の事で」
「あいつが、どうかしたか?」
「高虎さんは、大海に側女となるよう求めていましたが、それは今も変わらないんでしょうか」
虎之助の青い質問にも、高虎はうろたえず答える。迷いない答えは、一本の筋が通っていた。
「それはもちろん。一度求婚しておきながら、自分から破棄する馬鹿なんざいないさ」
「そうですか。あの……失礼ですが、高虎さんはまだ、正室を持っていませんよね。正室にしようと、考えた事はないんですか?」
「ない。武士にとって正室は、お家を繋ぎ家風を高めるものだ。あいつの身分で、それは敵わないだろう」
「しかし、愛した女を大事にしてやりたいと思わないんですか? 好きだと気分のいい言葉を吐いても、結局己の欲を優先させている事になりませんか」