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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
 
「秀吉様の深いお考えを、たかが遊女が理解できぬのも仕方ないな。あれはただ堕落している訳ではない。この先秀吉様がより高みへ昇るため、どうしても必要な宴だ」

「……確かに、分からないね。羽柴と言えば、まだ織田が尾張の田舎大名だった頃から仕える臣じゃないか。その功績を考えれば、今さら馬鹿になったとは思えない。これじゃまるで、織田の大殿に腑抜けを晒しているようじゃないか」

 大海が反論してくるとは思っていなかったのか、武士の表情は一瞬揺れる。だがすぐに棘を向け、自らの両腕を前に組んで威圧した。

「時には腑抜けと思わせておく事も、駆け引きとしては有効な手だ」

 わざわざ腑抜けと思わせる利点。大海は今までの秀吉を思い出し、一つの結論を導く。

「まさか、織田に対し翻意はないと示すために、わざと?」

 秀吉は織田の命令に逆らい、戦をせず先に離脱していた。そうなれば、織田へ反すると思われるのはまず間違いない。そこへわざわざ乱痴気騒ぎを起こせば、謀反を企み蓄財している訳ではないと見せかけられる。宴のために美女を攫ったと吹聴したのも、織田への根回しかもしれない。
 
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