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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
 
 志麻が吐き出した言葉に、虎之助は頭に血が上り拳を握る。だが高虎はそれに気付くと虎之助の手を掴み、首を横に振った。

「高虎さん……」

 鋭い若虎の目をした虎之助を制すると、高虎は再び志麻に向き直る。

「お前のそれは、愛情ではなく甘やかしだ。母親ごっこがしたいだけなら、それこそ人形相手にしておけ」

 それだけ言い残し、高虎は虎之助と行長を連れて出ていく。志麻は茫然と立ちすくみ、しばらくその場から動けなかった。

 一方、離れの屋敷に小走りで向かう虎之助は、止められた拳を緩められないまま、高虎に抗議していた。

「高虎さん、どうして止めたんですか! あんな言い方……あんまりです!」

「お前が怒る気持ちはよく分かる。だが、深く関わらない人間からすれば、結局そう見えても仕方ないのも確かだ。あいつはここで侍女として働く限り、子飼いの玩具で性奴のままなんだ」

「けど……」

「ろくに物事を知らねえ連中を黙らせたいなら、強くなるしかない。守る力もないのに噛みついたって、何も変わりゃしないさ」

 誰しもが皆、事の顛末を全て知っている訳ではない。事実だけを目にすれば、大海が慰み者である事に違いはないのだ。
 
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