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戦国ラブドール
第17章 高虎と若虎
だが、虎之助は拳を振り上げるどころか、なぜか笑い出す。市松が訝しげに見つめれば、虎之助は市松の背中を思い切り叩いた。
「この、馬鹿。遠慮だなんて慣れねえ真似をするから、馬鹿をやらかしちまうんだよ。大海に惚れたって言うなら、正々堂々競い合えばいいだろ」
「いや、けど……」
「どんな男が他にいても虎之助じゃなきゃ駄目だと言わせなきゃ、意味がねえだろ。だから、下手な遠慮は必要ない」
市松はしばらくうつむき考え込んでいたが、やがて顔を上げると虎之助に手を差し出す。
「……恨みっこなしだぞ」
虎之助はその手を強く握ると、力強く頷いた。
「それはこっちの台詞だ。お前には、負けねえからな」
しっかりと繋がれた手に、もう遺恨は残っていない。前を向いた男の目には、一本の光が通っていた。
そして虎之助は握った手を離すと、ふと思い付き市松に訊ねる。
「なあ、市松。お前がもし、もしだが大海を娶ったとして、その後誰かが政治的な縁談を持ってきたら、どうする?」
「なんだよ、藪から棒に。縁談って……そりゃ、例えば秀吉様から持ち掛けられたなら、簡単にゃ断れねぇなあ」