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戦国ラブドール
第19章 愛憎
小夜と共に侍女の仕事に向かい、それも一段落した昼過ぎ。いつもなら吉継に囲碁を教えてもらう時間だが、大海は佐吉の暮らす屋敷に向かっていた。
「佐吉、いるかい?」
声を掛けてみるが、屋敷の中から返事はない。しかし、よく耳を傾けてみれば、裏庭の方で鍬を振るうような音が聞こえた。
大海は裏に回り、そっと覗き込む。裏庭には小さな畑があり、そこでは見慣れない少年が畑仕事をしていた。
「あの……」
大海が声を掛ければ、少年は顔を上げる。少年は大海の髪を見ると、鍬を置きぺこりとお辞儀した。
「ああ、あなたが噂の『黄夫人』ですか」
「黄夫人?」
「兄が、そのように話をしていましたから」
兄、という事は、おそらくこの少年は佐吉の弟なのだろう。大海が目を丸くしていると、佐吉の弟は大海の前まで歩いてきた。
「皆は大喬に例えるが、あれはそれほどしとやかじゃない。猪のようではあるが、黄夫人の方がまだ近いって。まったく、褒めてるんだかけなしてるんだか分からないですよね」
「佐吉が、そんな事を?」
「はい。兄が女性の話題を出すなんて初めてですから、僕も気になっていたんです」