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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
 
「二人が帰ってて、残念だった?」

 そんな武士にからかいの声を上げるのは、連れの武士。彼は透き通るような白い肌と、烏の濡れ羽色をした髪をした美少年である。女性のような面持ちの二人が並んでいると、武士らしい空気にはどうしてもならなかった。

「残念なんかじゃない! ただ、失態を見られずに済んで安心しただけだ」

「確かに、佐吉が本を取りに行って本を忘れるなんて、滅多にない間違いだよね。どれだけ動揺してたのか、見たかったな」

「っ、吉継!」

 佐吉と吉継。二人もまた秀吉子飼いの武士ではあるが、大海がそれを知る由もない。吉継のからかいに佐吉は眉間に深い皺を寄せ、先程忘れた本を手に取った。

「ここにいないなら、会いに行ってみようかな」

 吉継がぽつりと呟けば、ますます佐吉は皺を深める。

「会ってどうするつもりだ。いくら変な女でも、わざわざ足を運ぶ必要などないだろう」

「変な女でも、あれは子飼いのものでしょ? 行長も、いたく気に入ったとか」

「それは……」

「だったら僕にも、彼女と会う資格はある訳だ」
 
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