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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
 
 吉継の言い分に、不都合はない。だが佐吉が思い出すのは、宴を憎み噛みついてきた大海の姿。心から望んで今の立場にいる訳ではないと、初対面の佐吉でもはっきりと分かる。会ってどうするつもりなのか。彼女の価値は、一つしかない。だが友の下半身の事情に口を挟むのもはばかられて、佐吉は黙り込んでしまった。

「そんな怖い顔しなくても、柿をおすそ分けするだけだよ。ほら、この間たくさんもらった分、佐吉がいつまでも手をつけないから、山ほど余ってる」

 吉継の言葉は真意か、はたまた佐吉への気遣いか。どの道佐吉が、強く止める理由はない。

「……柿は嫌いだ」

「僕は好きだけどね」

 吉継は佐吉を置いて、先に書庫を出て行く。その足が向かうのは、おそらく侍女の屋敷だろう。

 佐吉に、大海へ同情する義理はない。むしろ秀吉が彼女に与えた役目がそれならば、しっかり励めと進めるべきである。だが嫌がっていた彼女を思えば、いつまでも心の靄は晴れなかった。







 今日はもう穏やかに過ごせるだろうと考えていた姉妹の元へ、訪れた武士の足音。わざわざ部屋までやってきた彼に対し、姉妹の反応は対照的だった。
 
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