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戦国ラブドール
第19章 愛憎
「佐吉さん、もう大丈夫ですか? 私も彼女に用があるんですが、連れて行っても?」
「……ふん、お節介な奴だな、お前も」
行長が全てを目撃しながら今まで出て来なかったのは、たんなる興味本位ではない。憎まれ口を叩きながらも、佐吉は表情を和らげていた。
「おい、大海」
「な、なんだい?」
「この間は、悪かった。どんな理由であれ、八つ当たりは許されるものじゃない。お前が気に病む必要などないんだ」
「佐吉……いや、あたしだって、無神経だった。あんたが頭を下げる必要なんてないよ」
「お前が顔を見せなくなれば、吉継も煩くなるからな。今度詫びを兼ねて、何か馳走してやる。だから……今まで通り、囲碁でもなんでも教わりに来い。吉継と二人で、待っている」
佐吉の想いが全て伝わっている訳ではないだろうが、わだかまりが解けたのはしっかり分かったのだろう。大海は満面の笑みを見せ、しっかり頷く。
夜の闇も夕空の橙も、全て受け入れさざなむ笑みが、佐吉には朝日を受けて輝いているように見える。大海の持つ本当の明るさが戻った事に、佐吉はただ安堵した。