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戦国ラブドール
第19章 愛憎
「……お前のその顔が、好きだ」
佐吉は大海の頬に手を伸ばし、心のまま呟く。互いに立ってしまえば、小柄な佐吉は唇すら簡単には奪えない。だが距離を縮めるには、自ら背伸びしなくてはならない。そう悟った佐吉は、大海を引き寄せ耳元で囁いた。
「お前が俺の気持ちを知りたいと望むなら……次は、室内で会おう」
恥ずかしい単語を発した訳でもないのに、その言葉は大海の耳を色めかしく撫でる。ぞくりと背中を走る甘い痺れに、大海は肩をぴくりと震わせた。
佐吉は大海の返事を待たず、一人で城の方へ戻っていく。だが大海の心臓は簡単に収まらず、しばらく高鳴っていた。
「佐吉さんってば、私の存在は完全に無視ですか。あーあー、お熱くてこっちがのぼせてしまいますなぁ」
行長は両手で自分の頬を扇ぐと、大海を横目で観察する。行長の軽口にも反応せず、大海は顔を赤くして俯いていた。
(ま、あそこまで言われれば、いくらお鈍い大海さんでも、流石に何かは察したようですな)
心ここにあらずな大海を引っ張り、ひとまず行長は城内へ戻る。そして寒いだろうと火鉢を用意するが、大海はそれも必要がないくらい、体が熱いままだった。