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戦国ラブドール
第19章 愛憎
「大海さん。今日、父から文が届きましてね、あなたのお父上についても、ちょっと書いてありました」
行長が口を開いて、ようやく大海は我に返る。膝を抱え俯いていた顔を上げ、行長に訊ねた。
「その文には、なんて書いてあったんだい?」
「堺に来ないかと使いを出したところ、快い返事がもらえたそうです。道中、長浜へも立ち寄るように話をつけました。近い内に、お父上に再会出来ますよ」
「本当かい!?」
「商売人は信用が命綱、決して嘘は付きません。ここまでくれば、小夜さんに話をしても大丈夫でしょう。喜ばせてやってください」
「ありがとう……感謝しても、しきれないよ。本当に、良かった……」
気が緩んだのか、大海はぽろりと涙をこぼす。それを見た行長は、大海の隣に座り直し、懐から小さな布を取り出した。
「気が強いくせに、大海さんは泣き虫ですなあ。きっと、お父上も心配してますよ」
行長はその布で涙を拭い、慰めるように頭を撫でる。
「本当に……心配ですよ。そんな泣き虫のくせに、ほいほい人の気持ちを受け止めちゃうんですから。大丈夫大丈夫って抱え込みすぎて、沈んでしまったら……」