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戦国ラブドール
第19章 愛憎
行長はそこでしばらく俯いてしまい、沈黙が流れる。だが大海が声を掛けようとすればすぐに明るい顔をして、いつもの軽口を叩いた。
「そんな娘を持つと苦労しますから、私も将来娘が出来た時は、気を付けて育てないといけませんなぁ。いやはや、大海さんのお父上には同情しますわ」
「わ、悪かったね面倒な娘で!」
「悪いと思うなら、もっと要領よく生きた方がいいですよ? ほら、立派な見本が、今も目の前にいるでしょう?」
大海が冷めた目を向ければ、行長はけたけたと笑う。気が付けば軽口ばかりの行長に、大海の心臓はすっかり落ち着きを取り戻していた。
「ところで行長、その布はなんだい? 手拭いにしては小さいし、柔らかいし……なんか、すごく綺麗な布だね」
「これはレンソ言いまして、南蛮のちり紙みたいな物です。ほら、この刺繍が南蛮らしくて良いでしょう?」
真っ白な花の刺繍は、確かに日本では見られないものである。大海は目を輝かせて眺めるが、すぐに首を傾げた。
「こんなに綺麗な物を、南蛮人はちり紙に使っちまうのかい? すぐ捨てるなんて、もったいない」