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戦国ラブドール
第21章 急転
高虎の心に渦巻くのは、無実の市松を陥れ大海を引きずり込もうとする者達への怒りである。だが同じ事実を目の前にして、若い虎は悲しみに寄り添おうとしている。目に見えた違いに、高虎はちりりと胸の奥が焼け焦げた気がした。
「――高虎さん?」
高虎が黙ってしまうと、虎之助は素直に高虎を慕う目を向ける。くすぶる思いをひとまず見なかった事にすると、高虎は立ち上がった。
「とにかく、今は市松が無実だと証明しないとな。市松は子飼いの中でも秀吉一番のお気に入りだ。とはいえ、早く身の潔白を明かしてやらないと、厳しい処分は免れないだろう」
「もし、本当に自作自演だとして、半兵衛様を相手に、俺らが口で敵うでしょうか」
「いざとなれば、ふんじばって逆さ吊りにして吐かせてやるさ。それぐらいの罪を、奴は犯したんだ」
高虎は鼻息荒く語り、逞しい腕に力を込める。矛盾のないよう筋立てれば、敵は竹中半兵衛なのだ。いかなる理由があれど、それは許される事ではなかった。
だが、二人の推理は、何一つ証拠のない推測に過ぎない。同じ時の頃、全く違う推理が展開されている事を、二人はまだ知らなかった。