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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
吉継に問われて、大海は口をつぐむ。秀吉は自分達を攫った本人、憎悪しかない。だが秀吉は確かに、誰かを贔屓するような様子はなかった。私怨で事実をねじ曲げ、無闇に他人の信頼関係にひびを入れて許されるのか。大海が今まで通してきた正義は、嘘を良しとはしていなかった。
「……なるほど。そういうところが、佐吉の目に付いたんだね」
吉継が唇を重ねれば、保身と真実に揺れる口が塞がれてしまう。昨日までは、ただの一人の男も知らなかった大海の唇。だが今日は、吉継の唇が男にしては柔らかいと気付いてしまっている。胸にこみ上げてくるのは、快楽だけではなかった。
「んっ……はぁっ!」
吉継の唇は首筋に落ちると、赤い跡を次々に残していく。隠しようもない小さな花に吉継は微笑むと、大海の帯を抜いた。
「ごめんね、しばらく消えそうにないや。市松と虎之助に聞かれたら、『吉継がやった』って言っておいて」
吉継はその白い肌を見れば、志麻が嫌う『近江派』であると予測出来る。跡は、二人への挑戦でもあるのだろう。贔屓は許さない、自分達も秀吉の家臣として同等なのだと。