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戦国ラブドール
第21章 急転
「あいつ、そんな事を? じゃああの花束は志麻さんの見立てだったのかい」
「志麻は頼りになる、これからも力添えして欲しいと、市松さんは穢れなき目で私に仰られました。そのように純粋な心を持つ優しい子が、どうして愛する娘の妹を犯せましょうか」
大海は、志麻に頼み込み、どうやって謝るか相談する市松の姿を思い描く。志麻を母のように慕い遠慮なく甘える様子が目に浮かぶようで、大海の頬は自然と緩んだ。
「……では、市松が真犯人ではないと仮定しましょう。ならばどうして、小夜さんは犯人を市松だと話したのでしょうか。嘘をついたとなれば、今度は小夜さんの身が危険です」
偽りで市松を貶めたとなれば、小夜が秀吉の愛妾とはいえ、ただでは済まされない。血縁のある市松に代わりはないが、大勢存在する秀吉の愛妾など、牙を向けばいくらでも切り捨てられるのだ。半兵衛の問いに答えたのは、静観していた孫六だった。
「別に、矛盾はない」
「ほう、それはどうして?」
「夜中、寝ていたところを急に襲われたなら、部屋は真っ暗だ。顔はよく見えないだろう。そこでもし『我は市松なり』と言われたら、それは市松だと思うだろう」