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戦国ラブドール
第21章 急転
半兵衛は孫六に感心した様子で、さらに訊ねる。孫六もそれに怖じ気づく様子を見せず、淡々と無表情で語った。
「志麻、市松は昨晩、部屋で寝ていたと言っていたんだな」
「え、ええ。市松さんは、部屋で寝ていたから自分ではないと訴えていました」
「ならば、一つ大きな証拠がある。犯行時間にそれを聞いた者がいれば、無実は証明出来る」
証拠を見る、ではなく聞く。そう話した孫六の言葉で、大海は気付く。
「もしかして……いびき!?」
外まで響く、はた迷惑ないびき。もし夜中に誰かが近くを通りがかっていれば、それを聞いていてもおかしくはないはずだ。希望の見えた瞬間、真っ先に動き出したのは志麻だった。
「私、城の人間全員に聞いて参ります! あなた方も、皆に確認をお願いしますわ」
志麻はそう言い残して部屋を飛び出し、はしたない足音を立てて去っていく。普段の厳格な態度からは考えられないが、それも市松を救うため。志麻の愛情の深さに、大海は尊敬を覚えた。
「では、私も皆に聞いてみましょう。志麻と私の近習の力があれば、半日と掛からず真相が分かるはずです」