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戦国ラブドール
第21章 急転
「孫六、ちょっと……」
大海が声を掛けても、孫六は寝息を立てるばかりで答えない。狸寝入りか、それとも恐ろしく寝付きがいいのか。どちらにせよ、思惑通り大海は動けなくなってしまった。
(休めって言っても、これじゃあたしは休めないじゃないか。優しいんだか、勝手なんだか、分からないね……)
大海は孫六の顔を覗き、心を探ろうとする。閉じた目から伸びるのは、長いまつげ。幼さの残る輪郭に触れてみれば、子どものように体温は高い。
「可愛い……」
人形のような顔立ちをした孫六に、大海はつい本音を漏らしてしまう。しかしそれは、もし本人が聞いていたら、間違いなく機嫌を損ねる言葉である。だが孫六は変わらず膝の上で、小さな寝息を立てていた。
本人は認めないだろうが、孫六を表現するにおいて一番大海が的確と思うのはやはり「可愛い」という言葉だった。見た目に似合わず落ち着いたところも、そのくせ割と強気なところも、いじらしくて可愛らしい。
目覚めれば嫌な顔をされるだけなのは、目に見えている。大海は今のうちに頭を撫でて、可愛がりたいと望む姉の本能を存分に満たした。