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戦国ラブドール
第21章 急転
高虎の胸の中には、一度は切り替えたものの、ずっと変わらず靄が残っていた。愛する女の心配よりも先に、理不尽に対する怒りが爆発してしまった心。誰に胸の内を知られた訳でもなく、またそれが間違っているとは言い難い。しかし過ちを塗りつぶすかのように、高虎の足は大海の元へ向かっていた。
大海がいると聞いた部屋の襖の前で、高虎は一つ深呼吸をする。そして声を掛けようとした時、中から声が漏れてきた。
「……ごめん、あたしも寝てたみたい」
「いや、別に。それより、眠いなら交代だ。お前も、足が痺れただろう」
大海と話しているのは、不倶戴天の敵である孫六である。高虎は警戒し気配を消すと、様子を伺おうと襖を少しだけ開き隙間から覗いた。
何があったのか、孫六は大海の膝枕で寝ている。しかし体を起こすと、今度は自分が正座し大海の頭を膝の上に乗せた。
「じゃあ……ちょっとだけ。すぐ起きるから、それまで……」
大海は孫六の膝枕で、すぐ寝ついてしまう。安心し身を預ける姿に、高虎はますます靄を深めた。
(なんで、あのガキがここにいるんだ)