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戦国ラブドール
第21章 急転
 
 下半身から沸く欲が、体を動かそうとした、その時。掴んだままだった大海の手が、孫六を強く握った。

「父さん……」

 小さな寝言が、孫六の欲を押し止める。孫六は大海の父を見た事などないが、おそらくまだまだ小柄な孫六と似てはいないだろう。だが大海は、一番信頼しているであろう父の夢を、孫六の膝に重ねて見ているのだ。

(……これは、苦行だな)

 孫六は押す事も引く事も出来ず、むずむず沸く欲にただ耐える。せめてもの意趣返しにと、先程撫で回されたように撫でくり回してやろうかとも考えたが、指の間に大海の赤髪が通るだけでも下半身に繋がってしまう。触りたいと思う小さな願いすら、今は耐えなければならなかった。

「……ん?」

 不意に耳に入る、襖が動いたような音。孫六は顔を上げるが、特に誰かが入ってくる気配はなく、襖は閉まったままである。

(気のせいか?)

 追い掛けて確かめるには、大海を下ろさなければならない。苦行だと思うのに、いざ離れるとなれば、寂しさが胸を支配した。

(……まあ、気のせいだろう)

 結局、孫六は都合のいい結論をつけると、再び眠る大海を眺めた。
 
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