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戦国ラブドール
第21章 急転
さらに、来訪者はそれだけではなかった。勢い良く走る足音がしたかと思えば、大海に背中から大胆に抱きつく。そして小さく柔らかい布で目隠しされると、背後から軽い声が飛んできた。
「さてさて、今あなたを抱き締める乱世の色男は誰でしょうかー?」
西の訛りが混じる声に、手拭いとは違った、覚えのある布の感触。大海には心当たりが一人しかいないが、大海より早く、虎之助が怒声を上げた。
「行長っ、てめぇ離れやがれ!!」
「ああ、いけずですなぁ虎之助さんは。名前呼ばれたら、問題出した意味がないじゃないですか」
行長はさりげなく大海の涙を拭うと、南蛮由来の布、レンソを大海に握らせる。
「あなたが悲しんでいる時、涙を拭うのは私の役目。このレンソを私と思って、大事にしてくれますか?」
「あんたねぇ……なんでいつもそう軽口ばっかり」
「それで私の可愛いお姫様が泣き止むなら、空に浮くまで軽ーい言葉を吐きますよ。ああ、泣き止んだお礼は、あなたの唇一つで構いませんよ」
行長が大海の唇を指でなぞった瞬間、行長は突き飛ばされ庭に放り出される。だがそれは虎之助達の犯行ではなく、追ってやってきた吉継と佐吉だった。