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戦国ラブドール
第21章 急転
「はい、悪い虫排除終了ー。あ、大海ごめんね、その布回収するから」
吉継はちゃっかり自分が大海の背中を取ると、レンソを佐吉に渡す。佐吉は放り出された行長へそれを投げると、刺々しい視線を向けた。
「お前に貸しを作ると、いつどこでどんな無茶を言われるか分からんからな。大海、これには決して近付くなよ」
「まー、佐吉さんまでそんな薄情な! 同じ近江の人間同士、仲良くしましょうよ」
だが佐吉は行長を無視し、立ったまま大海を見下ろす。端から見れば不遜な態度に見えるが、それは単に大海が四方を囲まれ、顔を合わせにくいからに過ぎない。大海には、佐吉の義理堅さがしっかりと伝わっていた。
「吉継が、お前を心配だと言って聞かないからな。心労で吉継まで倒れられたら困る、俺は監視ついでに来たまでだ」
「あんな事言ってるけど、僕の家に飛び込んで喚いてたのは佐吉の方だからね。でも、心配なのは本当。だってほら、せっかくの美人が台無しだよ?」
吉継の手が、大海の目の下を擦る。もう涙はこぼれていないが、腫れた目はそう簡単に戻らない。しかし添えられた手の温かさは、大海の心に浸透していく。