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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
「市松、お前が一番だって? ざけんな、こん中で一番強いのは俺に決まってんだろ」
「はあ? 喧嘩しちゃ俺に負けて猫みたいに泣いてたお前が一番とか、有り得ねぇし」
「勝手に過去を捏造するんじゃねぇ! いっつも負けてたのは市松の方だろうが!」
「おう、なんだったら今から試してやるか!?」
「いいぜ、じゃあ勝った方が大海を連れてくか」
二人は縁側に寝転び互いの右手を握ると、腕相撲を始める。拮抗した実力の二人は、歯を食いしばり鼻息荒く力を込めるが、なかなか決着がつかない。だが二人が盛り上がれば盛り上がるほど、佐吉は二人を見下し冷めた目を向けた。
「暑苦しい連中だ。うるさいという注意もまるで聞こえていない。よくこいつもこれで起きないな」
大海は孫六の袴を握り、すやすやと寝息を立てている。それを見ていると愛おしさが込み上げてきて、佐吉は赤い髪に手を伸ばした。
特に佐吉を咎める事なく、孫六は静かな声を上げる。
「多分、それだけ疲れている。今まで、大分無理をしていたんだろう」
「……ふん、この馬鹿が」
「私が二人の護衛に回っていたら、こうなる前に気付けた。彼女ではなく、お前達が悪い」